東京新宿区・H邸

1.敷地

新宿区にある静かな通り沿いにある住宅の建て替え計画。南向きで広い道路に面しているので環境は大変良い。大きな建物を建てることも可能だけれども3階建て家族の居住のみで、前面空地とピュロティとで地上部分に駐車スペースを確保して敷地の活用をという方針を確認する。
コンクリート打ち放しと外断熱の組合せという難題に取り組む。

2.杭

地盤は悪くないけれども、RC3階建てではさすがに杭が必要。鋼管杭を選択する。
施工部隊は基本的に建築主手配で、いわゆる自家施工に近い形式。建築主がゼネコンのベテラン所長なのでできたこと。

3.基礎配筋

基礎配筋の様子。都内では厳しい施工が必要なことの方が多いけれど、敷地に余裕を持って配置してあるので作業もスムーズに運ぶ。鉄筋を四角く編んであるところが杭の部分。建築基準法改正以後に鋼管杭の精度や検査などで現場に混乱が生じているというような話しが漏れ伝わる。

4.中間検査

2階部分の床配筋が中間検査のタイミング。コンクリート打ち放し部分が多いので設備施工に細心の注意を払わなければならない。後では修正がきかない。

5.外断熱(1)

白いのが外断熱の発泡スチロール40mm版。初めて取り組んだコンクリートの外断熱は、マンションでは施工例も多くなってきたけれど、本気で考えるととても難しい。参考資料は薄い冊子がジュンク堂の隅にあっただけ。理論構築に長い期間を費やした。バルコニーやピュロティや梁が一体なので何処で断熱層を切るか、あるいは繋げるか、が最大の問題。考え方が整理できたときはホッとした。

6.外断熱(2)

外断熱でのもう一つの課題はコスト。ただやるだけなら苦心はしない。コンクリートの厚みを変え断熱材をはめ込むように納めるのを基本とした。
写真右がコンクリートの厚い部分で左が断熱版。断熱版には既にエッジにグラスファイバーテープが巻かれ下地塗りが完了している。
ピュロティ天井は内断熱を併用することでもコストアップを押さえた。

7.外断熱(3)

完成した部分。エンジ色と右の白いところが断熱部分。コンクリート勝ちの納まりは金物などを最小限に済ませた方法はメーカーの人も感心してくれた。

8.完成外観

正面は大きなフレームのある箱のイメージで、フレーム部分は三角形にカットしてある。正面の外観。断熱材の仕上げカラーが外観を決定するので何色もサンプルを作り関係者に見ていただいた。白っぽい色に決まりかかったが、私は強い色が良いのではとアドバイス。数日検討の上でこの色になった。

9.完成インテリア

子世帯の生活の中心である3階の広間の様子。主要な内部はコンクリート打ち放しと白い塗り壁の組合せ。コンクリート打ち放しでも冷たくないのが外断熱の効果で蓄熱もしてくれるので非常に安定した室内環境となっている。

10.空中庭

2階から3階へ吹抜の中庭がある。道路に面しない和室や浴室などは全てここに面するように計画している。屋上に上がる階段をキャンチレバーでデザインした。南面していないが反射光で思ったより明るく、換気効果も高い。空中庭部分は未完で建築主の楽しみで完成させるという予定になっている。