東京目黒区・W邸

1.第1案CG

この住宅の設計者として約30人の中からコンペで選出された。これは提案時のイメージCG。保存樹のある庭〜住宅中央にある中庭〜屋上庭園が流れるように連続しているいるのが特徴。構造は以前から興味を持っていたUFJフレームキット工法を念頭に軽量鉄骨を採用する予定。

2.基本設計時の外観CG

多くの打ち合わせを経て作成された基本設計案。全体構成のコンセプトはそのままだが規模と外観は随分と変化した。2階のボリュームが大きくなったので「都市の木箱」という外観イメージを防火木材を用いて実現しようとした。風情がありながら斬新な外観を、との希望にもマッチングしている。

3.同上部分CG

庭から中庭に連続してゆく部分。軽量鉄骨構造はUFJスチール(川鉄と日本鋼管の合併会社)のフレームキットを採用。いずれ採用の可能性があると思い登録研修を受けていた。専用ソフトを使って自分で構造シミュレーションできるのが有り難い。耐震強度を1.5倍で計画することにしたのでブレースが多くなり、位置をチェックしながらプラン作成が可能になった。中庭プランによって防犯性能を高めることも当初からのねらいだったので、開口の大きさややガラス等の検討にも時間をかけた。概算見積の了解を得て実施設計へ。

4.実施設計

残念なことに木箱案が廃案に。外観はこれしかないと思っていたのだが、メンテナンスフリーにして欲しいというのが理由なのでやむを得ない。結局住宅らしい外観をという家族全体の意向で屋根も復活することに。乾式タイル工法へ変更して最終案となった。

5.着工

地盤対策には万全を期す方針で柱状改良工事をおこなう。地盤改良、べた基礎、安定形状の構造体、高品質のフレームキット、とおよそ考えられる最高水準の高耐震構造住宅となった。耐震偽造事件があり、どうしても構造の説明が多くなる。

6.JFEフレームキット1

フレームキットが組み上がったところ。土台・柱・梁・ブレースによって構成される。現場では全てボルト締めで組み立てる。
この工法を採用した理由の一つが構造計画を自分の手でできるところ。登録設計会社になると簡易構造計算ソフトを供与してもらえる。軽量鉄骨構造の場合、例えば柱やブレースの位置などが変更になりやすい。そこを自分で確かめながら計画を進められる。特に耐震強度を1.5(住宅性能表示で耐震等級3)と高く設定したのでブレースが多く調整も難しかった。

7.JFEフレームキット2

土台回りの様子。全て工場生産なのでとにかく加工精度は抜群に良い。一般的に鉄骨構造は溶接の信頼が問題点。溶接不良もそうだが軽量鉄骨では溶接歪みも気になるところ。熱を加えるのだからある程度はやむを得ないものと思っていたが、この工法では驚くほど安定している。ボルトの締め忘れ対策にマークをしてチェックを念入りにおこなう。

8.床ALC

2階の床部分。今回JFEフレームキット工法を採用してみて最も予想外だったのが2階の床精度。鉄骨梁の上にALCを敷き詰めて構成するのだが、驚くほど平滑で床工法もパーチクルボードを敷き詰めて下地にするというシンプルなものにした。

9.外壁のサンプル

外壁の乾式タイルを選定するため計6種類のサンプル版を掲示してしばらく様子を見ることにした。天候や濡れ具合によって随分と表情が変わる。結局右端のタイプを選定した。乾式タイルとはセメントなどで張る方式ではなく、凹凸のついたボードを下地として引っ掛けて接着してゆく工法。モルタル工法に比べ軽くてメンテナンスも楽。INAX社製の汚れが付きにくい光触媒タイプものを用いた。

10.塀

正直、都市の住宅では本格的な塀を作る機会は少ない。今回は塀と門のデザインをどのようにしよするかも重要だった。いろいろ検討した結果、杉板模様を写したコンクリート打ち放しと人工木材の板を組み合わせることにした。杉板を面取りして少し粗めにして、庭の木の緑にマッチした自然な表情にすることに腐心した。

11.外壁

完成した外壁の表情。正面中央のR壁はアクセントとして明るく強めの色を用いた。

12.広間とセンターコート

広間から池のあるセンターコートを見たところ。このセンターコートを中心にしたプランがこの住宅の特徴。木製の大型引戸を引き込むと、写真のように一体化する仕掛け。壁は珪藻土左官仕上げ。

13.オリジナル照明

広間の照明器具。長さは約1.5Mある大きなもの。細い桧材を積層して構成する方法を初めて用いた。スリット状の隙間から光が漏れるデザイン。

14.ダイニング

広間がにつながるダイニングは北側に突き出して配置している。テーブル配置に合わせて半12角形状のプランで天井の高い部分にトップライトを付けたので、北側でも朝夕は日が射し込んで明るい。

15.和室

堀こたつのある和室はツタ模様の江戸唐紙の襖を用いてデザインした。床の間の脇に仏壇置き場があり、1枚の襖を左右に動かしどちらかだけが見えるようにすることで、お客様も迎えられる和室をとの要望に応えた。