東京江東区・Kこどもクリニック+N邸

1.敷地

敷地の様子。40坪足らずの土地にクリニック併用住宅を計画するという条件は結構厳しい。無駄のない空間構成が必要だがこの辺は得意とするところ。幸い前面の広い道路と脇の私道がある角地なので計画はしやすい。また江東区はほぼ全域地盤が軟弱なので構造方式や各部の工法計画も重要になってくる。
クリニックの計画の場合、開業スケジュールを守ることが絶対条件。工程表を提案し厳しいスケジュールなので緊密な打ち合わせと決断が必要なことを伝え、快く了解を得る。

2.検討案CG

打ち合わせはスムーズに進み、作成された基本設計案のCGの一つ。クリニックもサービス業という意識が必要なので親しみやすい外観は重要。特に小児科となればなおさら。共に小児科医のご夫妻から「お城のような」というキーワードをもらい、ちょっとしたランドマークになるイメージでデザインを進める。軽量鉄骨造でサイディング外壁で建物の軽量化を図る。数十枚のCGを作成し比較検討をした内の1枚。

3.完成模型

クリニックと住宅、2つの機能を分離しつつ、うまく繋げる計画をするのがポイント。敷地を目一杯使って様々な機能を立体的に構築する。隣地との間隔も僅かしかないところもあり、施工計画も重要になる。クリニックはエアコン台数が多いのでその辺も慎重に検討する。

4.基礎工事

いよいよ着工。写真は基礎工事の地中梁と耐圧盤の配筋の様子。軽量鉄骨構造といってもプレハブ住宅の基礎とは違うしっかりとしたもの。基礎工事の前に杭工事をおこなっている。摩擦杭というものを約30本ほど打ち込んだ。

5.鉄骨の建て方

鉄骨を組み上げる。軽量鉄骨構造は柱は細くて壁の中に入ってしまうのが良いところだが部材数は多い。ボルト孔が合わないとか、部材が一つ足りないとかが生じることもある。順調に組み上がってゆき一安心。
外壁のサイディングもサンプルも候補を数点選び、現場に設置してもらう(左下)。
軽量化と性能をバランスさせるため、床はキールトンプレートとALCを混用するなど苦心した。

6.窓配置の検討

設計の最終決定をどの段階でするかはいろいろなスタイルがあると思う。私の場合はなるべく現場で決める主義。図面段階ではもちろん全て記入してコストを決めておくが、現場でコストが増えない範囲でもう一度検討する。写真は円筒部の丸窓の位置を外観とインテリアで確認しながら決めているところ。

7.完成外観

歩道沿いから見たところ。外観は角の円筒部がランドマークになるデザイン。ここはクリニックの階段とプレイロットになるところ。先生から提示された「子どものお城」のようなイメージをスマートな感じで形にした。

8.私道側

1階と2階の半分がクリニックで残りが住宅部分になっている。円筒部以外はタイル模様のサイディング、隣地までの距離が狭くて足場が掛からないので内側から施工できるタイプを採用。現地シーリングが無くメンテナンス性能も良い。

9.左官壁

円筒部は青海波模様の左官金ごて仕上げ。全体には清潔で明るくしっかりした感じ、この部分は柔らかな手作り感覚で小児科医院らしさを演出している。

10.クリニック入口

クリニックのイメージカラーは青色とオレンジ色の2色。キャラクターデザイン、看板、外観、インテリアなどが統一したイメージでデザインされている。お二人の先生がそれぞれ好みの色で診察室までその流れでデザインされている。

11.待合い室

待合室から受付を見たところ。インテリアは柔らかな木の感じをベースにして、イメージカラー2色で構成されている。内部は限られたスペースを有効かつ機能的に活用できるよう、家具類も造り付けで設計している。機能性や機器類などについては明確な方針を示していただいたのでかなり詳細に検討できた。インテリア素材は抗菌作用などがある医療施設用をベースに選定。

12.階段とプレイロット

2階へもクリニックの一部が配置されている。円筒形の内部には2階へ上がる階段とプレイロットがある。クリニック特に小児科なのでとにかく安全が最優先。子どもの目線と予期せぬ行動をいろいろと想像して危険なところを無くしていった。

13.アルファベット

プレイロットから階段を見上げると吹抜の円筒壁になっている。この部分はただ壁紙を張るのではなく、何か遊び心を持った楽しくオリジナルなインテリアが欲しいと考えアルファベットをランダムに張ることを提案した。

14.住宅玄関

住宅部分では飼っている犬(ラブラドール)を考慮した設計をしている。床の素材、階段の形状など配慮の他に玄関の階段下にはドッグスペースを設けている。帰りをを待っている場所。

15.広間

一部が吹抜状に天井が高くなっている広間。その中央にオリジナルのペンダント照明を制作した。奥にキッチンなど配置されているが、スムーズな家事作業を考えた構成になっている。

16.オリジナル照明

花のイメージで制作したオリジナルの和紙照明。直径は大体90cmくらいで調光可能なペンダントライト。和紙の柔らかな感じと形がうまくマッチングした。
左上が吹抜部分のハイサイドライト。