vol. 3 「実験住宅Eキューブ」のエネルギーデザイン
(1997/12/23)
住宅開発はとかく新しい機能の足し算に終始している。その結果、住宅は大変便利になった。このことは皆が求めてきたことでもある。けれども一方で失ったことも大きい。エネルギーのあり方、環境、健康、家族関係など様々なところに歪みが生じてきている。
ここではEキューブの計画で取り組んだ住宅におけるエネルギーデザインの考え方について解説してみたい。現代の住宅エネルギーの利用には大きな問題点が幾つかある。
 1.エネルギーの使用量が右肩上がりに大きくなっていること
 2.夏の昼に使用量が増え、ここを発電インフラの目標とせざるを得ないこと
 3.都市におけるヒートアイランド現象が生じてきていること
 4.冷房や換気が原因と見られる健康被害が発生していること
これらの解決を考えるとき、今では殆どの住宅に取り入れられているヒートポンプ型エアコンを無くす方法を模索する必要があることに気が付く。一番暑いときや一番寒いときに最も効率が悪く、フロン(代替フロン)が不可欠であり、外に向かって熱を排出し、直接の冷気は不快感がある。エアコン本体があまりにも安価になったためにあまりにも安易に導入しすぎているのではないだろうか。この計画ではこれに替わる方法を提案することに大きな重点を置いた。
その手法とは基礎を利用した地下水槽に30トン近くの雨水を溜め、これにクールチューブを設置して室内を冷やすのである。最終的には地熱との熱交換によって平衡を保つ。この方法は渇水対策にもなっている。28トンという膨大な水量は熱量と一年の雨量推移とから割り出したものであり、住宅の半分を使うと1mほどの水深である。他の手法も複合させた結果この住宅におけるエネルギー消費は年間で6割近くも削減できる。また夏のピークカットは約50%程度になるとシミュレーションされた。
この方法の問題点は夏の最も暑いときに室内温度は28度程度までしか下がらないことである。現在のように快適温度を26度に設定し、最も外気温の高いときにこの環境を達成するように設備の能力を決めれば、明らかにヒートポンプを使うしかないのである。その瞬間のために全てを整える不効率さこそが根本的な問題点であろう。どこを我慢するかという思想ががこれからの住宅づくりの課題なのでである。

新涼房システム


夏の昼間のシステム

水蓄熱
クールチューブ
パッシブソーラー
の組み合わせ


エネルギー
シミュレーション

一番上が標準モデル
一番下が最終予測